「A LONG TIME A GO...」
ユーリは毎晩ひとりでベッドに行く。
父さんや母さんが「絵本を読んであげるよ」
と言ってもユーリは「いらない。おやすみなさい」とスタスタ子供部屋に向う。
ユーリはお話を読んでもらうのが大好きだ。
でも母さんや父さんは必要ない。
ユーリの左の耳の中には蟻が住んでいて毎晩お話を聞かせてくれるから。
ユーリが一番好きなのは「A PRINCESS OF PEACH」だ。
四回続けて頼んでも蟻は怒らなかった。
10歳のある夜、ユーリの左耳から蟻は出ていった。
ユーリは悲しまない。ほかに夢見ることがあるのだ。