2003年10月19日日曜日

プロポーズ

「あなたの声が触れればいいのに」
って言われたから僕は
「いいよ、なんて言おうか?」
って答えた。
「ほんとに?じゃあね……」
彼女は冗談でしょって顔しながらも楽しそうにリクエストしてくれた。
ぼくは帰る途中に雑貨屋で箱を二つ買った。
家に戻るとさっそく風呂場に虫取り網を持って入った。
エコーがかかる場所の方が形になりやすい。
「天国に星はない」
これは彼女の座右の銘。
ちょっと渋い声で言ったら焦げ茶色の卵型になった。
逃げ足が速いので網をむちゃくちゃ振り回してやっと捕まえた。
箱に押し込んでもまだ暴れてる。
それから甘い声で囁いた。まんまるのが飛び出した。透き通った黄色をしてる。
ふわふわと漂って僕の手の中に降りてきた。
マシュマロみたいな触り心地。
明日、二つの箱を彼女に渡したらどんな顔をするだろう。