「お届け物です」
箱に張られた送り票の差し出し人は別れた彼女だった。
「なにかアイツの部屋に忘れ物でもしたか?それともプレゼントを返すためとか」
オレはビリビリ乱暴にガムテープを剥がしと箱を開いた。
「う゛」
思わず箱を放り出すところだった。これは……髪の毛だ。
オレは彼女の黒くて長い髪が好きだった。
実際彼女の髪はきれいで本人も自慢しているらしく
手入れに怠りはなかった。
オレはそんな彼女と髪を褒め
「この髪はオレだけのものだ。ほかの奴には触らせないよ」
と髪の毛をかき分けてやっと姿を見せる耳に向かって何度も囁いていたのだ。
髪の毛には手紙がついていた。
[他の誰かに触られない内にお返しします]
髪の毛が溢れだしている段ボール箱は、一週間たった今もオレの部屋の隅に置いてある。
時々掴んで匂いを嗅ぐと懐かしい気分がする。