バチッと大きな音がして火花が散った。
「痛っ!」私も彼も叫び、それまで二人の間に漂っていた緊張を伴った甘い空気は破られた。
私たちは今、初めて手を繋ごうとしていたのだ。
私たちはその出来事の後、あらゆる接触を試みた。
おそるおそるくちびるを近付け、決死の覚悟でひとつのベッドに入った。
そして結局ただ手と手が触れる時にのみ火花が出るとわかったのだ。
どうしても手を繋ぎたかった私たちは試行錯誤の末、ようやくひとつの方法を見付けた。
私は右手に、彼は左手に炊事用のゴム手袋をはめて街を歩く。
もうすぐ銀婚式だ。