2003年9月2日火曜日

朱色の葉書入れ

月に数回母からくる葉書は私を苛立たせた。
ポストにそれを見つけると思わず破りたくなる。
年を取った母の筆跡は、はかなげで内容もとりとめがなかった。
天気の話や、近所の誰それが死んだとか、買い物がしんどいだの、そういうことだ。
そんなことしか書くことがなくても、母にとっては娘の私に葉書を書くことが少ない楽しみの一つなのだ。
だが、それを私は受け入れられないでいる。
理由はわかっていた。
母が老いていくのを、そしてまもなくやってくるであろう私自身の老いを直視できないのだ。
その悲しみや不安をごまかそうとするかのように、ヒステリックになる私。
私はなるべく文面を見ないようにして塗り物の箱に葉書を納めた。
母からの葉書はすべてここにしまってある。