久しぶりに訪ねた寂しい道化師のアトリエはすっかり片付けられていた。
大きな黒い箱ただひとつを残して。
「どこに行ったんだろう」
「旅に出たんだろう。路上で芸をしながらなんとかやっているさ」
小父さんはそう言いながらも心配顔だ。
「旅に出るなら教えてくれればいいのに……」
ぼくは黒い箱に近付き、重い蓋をずらし覗きこんだ。
「小父さん、来て!」
ぼくは小声で叫ぶ。
中を見た小父さんとぼくは顔を見合わせ静かに蓋を戻した。
道化師は膝を抱えて寝息を立てていた。
三日後、道化師は新しい芸を見せてくれたんだ。