2003年8月26日火曜日

MUR MUR

小さいとき、ぼくは壁の汚れやシミが人の顔みたいに見えるとすごく恐かった。
その話をしたら小父さんは大笑いしたので、ちょっとムッとした。
「実は私は壁抜けができるんだ」
と小父さんは言った。
「壁抜け?」
「そう、壁を通り抜けられる。人に見られると厄介だから滅多にやらないが。その時なぜか、壁に顔の跡が残る」
でも、ぼくはこの話をちょっと疑っている。
だっていくら頼んでも小父さんは「壁抜け」をやってみせてくれないもの。