懸恋-keren-
超短編
2008年5月23日金曜日
指先触れた
かつて感じたことのない触り心地だった。
きみの唇にちょんと人差し指で触ると指先だけではなく、鼻に何かが触れたような気がするのだ。何かはもうはっきりわかっている。きみの舌だ。ぼくが指先で唇に触れると、見えないきみの舌がぼくの鼻を舐める。
「なんで?! 意味わかんねぇ」
ぼくは大袈裟におもしろがる振りをして、きみの唇をつんつんと触り続ける。
ぼくの指先はきみの口紅が付いて、真っ赤になった。もう背伸びしなくていいよ。
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