懸恋-keren-
超短編
2008年5月20日火曜日
迷子になった
あんまりすぐに迷子になるので、パパが小さな鬼をくれた。
鬼は真っ黒で目が真っ赤に充血していて、瞳は金色で、細くて長い一本角がある。
ぼくはいつも鬼をポケットに入れるようになった。ふだんは人形みたいに動かないけれど、パパやママとはぐれて「迷子になった」
と言うと、鬼はポケットの中でむくむくと動き出す。ぼくの足が勝手に動く。鬼が動かしているから、逆らっちゃいけない。こうしていればちゃんとパパやママに会えるのだから。
困るのは、右手と右足が一緒に出ちゃうこと。
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