2008年5月15日木曜日

窓辺に一輪

通学路の途中にある白い家の花はおしゃべりだ。窓辺に一輪、ガラスの花瓶に入れられた花は、数日ごとに変わるけれど、なぜか皆よく喋る。
僕はこのうちの人とは誰とも知り合いではないし、顔も見たことがないけれど、おしゃべりな花のおかげで、家族の様子が手に取るようにわかる。
奥さんと旦那さんは靴下が臭いと喧嘩をするし、娘のピアノは下手くそで、トイレの芳香剤は人工的な金木犀の匂い、朝のトーストが三日に一度焦げる………全部花から聞いたんだ。
僕はお返しに、ラジオで聞いた今日の天気予報を諳じる。