懸恋-keren-
超短編
2007年2月5日月曜日
二月五日 迷惑電話
「奥さま……失礼、ご主人さまですか?」
と問う電話の向こうの声は、馴れ馴れしかった。
いつもここで迷う。
もっと低い声を出してやろうか、それともわざとらしく甲高い声にしてやろうか。
でも結局、少し気分を害するから自動的に低い声が出る。
「……違います」
どちらにせよ、相手はここで電話を切ってくれる。今日もそうだった。
ところが、受話器を置いたあとも、相手の声が筒ぬけだった。
「性別不明。ブラックリストに登録しました」
わたしは何のブラックリストに載ってしまったのだろうか。
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