2005年9月22日木曜日

花戯れ

隣の家の幼い娘は、紫色の長い髪をしていた。
楝の花で染めるの、と少女は言った。
「五月になったら染めるの。見る?」
私は、「是非」と答えた。
五月のある日、少女は井戸水で念入りに髪を洗った。
真っ白になった髪を日なたで乾かしながら、私たちはとりとめのない話をした。
髪が乾くと、少女は服を脱ぎ裸になり、花をつけた楝の木に登った。
伸びやかに四肢を動かし、するすると登る姿は、あまりにも眩しい。
しばらくして降りてきた少女の髪は、見事な紫色に染まっていた。
素裸のまま私の前に立ち「今年はうまく染まったよ」と笑う瞳は、先よりも少し大人になったような気がする。

【楝色C40M42Y0K0】