2005年9月18日日曜日

転校生

転校生は「ブラスバンド部に入りたい」と隣の席のわたしに言った。
「わたしもブラバンだよ。学活終わったら、一緒に行こう」
転校生は、さも当然だという顔をしてにこりともしなかった。
音楽室には一番に着いてしまった。まだよくしらない男の子と二人きり…あとから来たみんなに何を言われるか。
わたしの心配を知ってか知らずか、彼は細長い黒いケースを出した。
フルートだ。
慣れた手つきで楽器を取り出す。
「あ!」
転校生のフルートは青かった。
「珍しい?縹色のフルート」
わたしの声に転校生がはじめて笑った。
返す言葉が出ない。あまりにも驚いたから。それを構えた転校生の姿が、あまりにも美しいから。
「ハナダイロ」の上で転校生の白い指が踊っている。
なぜだか音が聞こえない。

【縹色C70M20Y0K30】