2004年10月9日土曜日

透明な理由

ガラスの帽子が届いたのは、誕生日の八日前だった。
と言っても、その帽子が本当に誕生日のプレゼントなのかどうかわからない。
箱を開けて、首を傾げ、しばし唸り、もうすぐ誕生日だということを思い出した。
だから、誕生日プレゼントだということにしておく。

帽子は緑色のガラスでできていた。
見た目ほど重くはない。
僕は帽子をかぶった。
ガラスの帽子など、聞いたこともなかったが、かぶる以外の帽子の使用方法を僕は知らない。
普段は帽子をかぶらないが、この帽子の心地はよいとすぐにわかり、気分のよくなった僕はそのまま外にでた。
「あら、素敵なお帽子ね」ベレー帽のおばあさんに声をかけられた。
野球帽の子供がゆび指して笑った。
小さな白い帽子をかぶせられた赤ん坊にじっと見つめられた。
なかなかどうして、悪くないじゃないか。
「よう!」
友達に背中を叩かれて振り向く。
「お、偶然だな。ちょっと見てくれよ、この帽子。珍しいだろう?」
「は?帽子?帽子なんかかぶっていないじゃないか」帽子をかぶっていないのは、キミだよ。