懸恋-keren-
超短編
2004年10月3日日曜日
さかさながれ
「何をしてるの?」
「帽子を切っている」
じゃくじゃくじゃくじゃくじゃく
「なぜ?」
「忘れそうだから」
じゃくじゃくじゃく
「何を?」
「子供の頃の出来事。この帽子はいつもかぶっていたから覚えているはず」
切り刻んだ帽子を手づかみ食べる。
「次に忘れそうになっても、もう帽子はないんだよ、いいの?」
恍惚の表情。返事はない。
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