「ルイード、さあ行こう。」
私の言葉を合図に、象は静かに立ち上がり、歩き始めた。
大通りに出ると人々はおしゃべりをやめ、我々をさっと避けた。遠慮のない視線が突き刺さる。
我々が出れば、この街に象はいなくなる。街はそれをお望みだ。
いつから人々は象を疎むようになったのだ。象が何をしたというのだ。そんな疑問をぶつけられる相手も、もういない。
街を出て、砂漠を越えた。冷えた月明かりは私と象をひとまわり小さくさせた。河を渡り、森を見つけ、私と象はそこに留まった。豊かな森だった。象は鼻を使い薪を集め、私は象の背中に乗り果実を集めた。
いつのまにか私は白髪になり、足を痛め、象の背中から降りられなくなった。
「ルイード、出かける時がきたようだ。」
森を抜け河を渡り砂漠を越えた。やがて見えてきた街の明かりで、私の胸はいっぱいになった
「ああ。ルイード、あれが私たちの故郷だ。」
街に入ると、大歓声に包まれた。
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500文字の心臓 第42回タイトル競作投稿作