公園のベンチで帽子を目深にかぶってうたた寝ている男がいる。
真昼の日差しはどんなに帽子を深くかぶっても遮ることはできないだろう。
にもかかわらず帽子は男の呼吸に合わせて、すやすやと揺れる。
「おじさん、何してるの」
子供が近寄り尋ねる。帽子は男にかわって答える。
「おじさんはお昼寝」
「お昼寝?ぼくはもう大きくなったからお昼寝しないよ!」
「おじさんは、もうずいぶん前からおじさんだが、とても疲れている。だからお昼寝」
子供はベンチに座り、男に寄り掛かる。帽子はまたすやすやと揺れる。
先に目覚めた子供は、男の帽子を自分の頭に乗せ、男の頭を撫でると、歩き出した。
帽子は、あまりにも小さな頭に少し戸惑ったが、黙っていることにした。