「話し掛けてみな」
満月の晩、ピーナツ売りから煙草を買った帰り道だった。
「え?誰に?」
周りには誰もいない。
「足元だ」
満月の明かりでできたぼくの影。
「や、やぁ。こんばんは」
[やぁ!こんばんは!]
影は立ち上がり威勢よく言った。
[いつもありがとよ!踏ん付けてくれて!それから!そうやってオドオドするのやめろ]
「なんか意地悪だよ…この影」
「そりゃそうだ。これは鬼だ。少年の裏の顔がこの影に表れる。
こうやってたまには影の意見を聞くのもいいもんだ」
小父さんはニコニコして言うけど、すごく疲れるよ……。