懸恋-keren-
超短編
2003年5月21日水曜日
A MEMORY
「小父さんにも子供の時があったの?」
夜の公園でシーソーに乗りながらぼくは聞いた。
「もちろん、私にも少年時代はあった。」
「昔話聞かせて」
「淋しかったよ……、こうして遊んでくれるヤツはいなかった。」
「どうして?」
「どうしてもだ。此処にはまだ誰もいなかったんだ……」
「隣町にも?外国にも?」
小父さんは質問には答えずに、すごく遠い目をした。
ぼくはシーソーを降りてハーモニカを吹き、小父さんはハッカ水を飲んだ。
ゴクリ、と大きな音がした。
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