ある日、その都市は忽然と姿を消した。都市のあった場所には砂漠が広がっている。
風も吹かず、砂粒一つも動かない有様を見て人々は恐れ、都市の行方に思いを馳せる者は少なかった。
都市の人々が変わらず活動しているということに気がついたのは七歳の少年だった。
六十歳年上のペンパルからの便りが三日遅れていることを気に病んでいた彼は、ポストを開けた瞬間小躍りした。
封書はいつもよりも些かくたびれた風情ではあった。ペンパルの記した日付は都市が消えた翌日だった。
そのニュースが世界を回ったのを皮切りに、都市にあった会社の商品が届き始めた。金融も動き出した。
電話も出来る。しかし、都市はない。
人々は、砂漠の下に都市がそっくり埋まっているに違いないと掘り返しているが、七十八年経った今でもまだ見つかっていない。