超短編
「いつ見てもいい色ね」 僕の描いた絵を見てお母さんは言った。僕は人参が嫌いだ。なのに、パレットに人参みたいな色ばかり作ってしまう。 その日、お母さんは人参のポタージュを作った。すごくすごくきれいな色だけれど、大っ嫌いな人参。「どうしても飲まなくちゃいけない?」 お母さんはウインクして見せた。恐る恐るポタージュを掬うと「人参の色を操ろうなんざ、二十年早いわい」 せっかく美味しく食べたいのに、また人参に叱られてしまった。だから人参は嫌いだ。