金時人参はちょっと特別だ。すらっとした姿、赤みの強い色……野菜のくせに、なんてカッコイイんだろう。
僕が人参を振り回して戦っていると、叱られた。「食べ物で遊んじゃいけません」って。でも僕は遊んでいるつもりではなくて、悪いやつと戦っていて、金時人参はレアで強い武器なのだけど、それを説明する言葉が見つからない。
そういう母だって金時人参を料理するときはいつもより楽しそうだった。とりわけポタージュを作るときは、ウキウキと嬉しそうだった。いつもは入れないお麩も入れて、いっそう丁寧に作っていたことを知っている。
相変わらず僕は金時人参を見ると特別な武器に見えてしまうけれど、母のポタージュの味を懐かしく思うくらいには大人になった。