青梗菜を初めて知ったのは、スープだった。もうずいぶん昔の話だ。
「軸は白菜の根本みたいに肉厚だし、葉っぱは小松菜のようでもある」と、知らない野菜をひとしきり観察したのだった。
中華風の味付けのスープはおいしくて、その野菜がなんという名前であるか、店主に訊くのを忘れてしまった。
「チンゲンサイ」という名前と、スーパーで売っている姿を覚えたのは、それからしばらく後のことである。
それ以来、あの店のスープの味を再現しようと毎日のようにスープを作るが、未だに納得のいくものが出来ていない。
幸い、青梗菜はずいぶん手に入りやすくなった。あのスープを食べた店があったはずの場所は、もうずっと前から空地のままだ。