超短編
「ようこそ迷宮へ」
と伯爵に導かれて古城へ入った。
私は着慣れないドレスに早くも肩こりを感じながら伯爵の後に続く。外から見る限りそんなに大きな城ではない。城らしい形はしているが、建物の大きさから言えば「城」と呼ぶのには相応しくないだろう。
だが迷宮と名高い城である。この人とはぐれてしまったら出られないかもしれない。
ところが城の中は、長い廊下が続くばかりで迷いようがないのだった。かれこれ十五分は歩いているが、まるで進んだ気がしない。
振り返ってさっき入ってきた扉を確認しようかどうか迷っている。