懸恋-keren-
超短編
2013年7月25日木曜日
汽車と鉄道路線夫(お題:線路)
汽車は遅々として進まないがほんの少しは進んでいる。
一人の鉄道路線夫が線路を敷く後を付いているからだ。
けれど、ゆっくりと景色を眺めることも、時にうたた寝することも悪くはない。
夜は鉄道路線夫を客室に乗せる。一等席の座席でこんこんと眠る路線夫を乗せて、後ろ向きに走り、しばらくして戻ってくる。今日出来たばかりの線路の具合を確かめる。
「すばらしい線路だ」鉄道路線夫の仕事はいつも丁寧だった。
そしてまだ線路のない道を見渡しながら、汽車も眠る。先は長い。
次の投稿
前の投稿
ホーム