2009年8月11日火曜日

銀河ステーション

別れを惜しむ恋人たちを尻目に、私は仁王立ちで汽車を待っている。
ステーションには次々と汽車がやってくるが、私の乗るべき汽車はずいぶん遅れているらしい。数十億光年の長距離汽車だから仕方がないのかもしれない。
しかし私は待ちくたびれた。足がホームに張りついたように動かない。
馴染みの駅員が私の前に立ち、一口だけ駅弁を食わせてくれる。
残りを頬張りながら、駅員は改札に戻って切符切りを始める。鋏の音につられて、私の心の臓は大儀そうに鼓動を続ける。
私は一体なんという星を目指して汽車に乗ろうとしているのだろうか、ふと不安になる。さっきまで確固たる確信の下に汽車を待っていたはずなのに、よくわからなくなっている。今の私に切符を確かめる術はない。
煌めく星星の眺めと裏腹に、ホームの一寸先は宇宙の闇。汽車など待たず、足が動くうちにホームの向こうへ歩きだせばよかったのかもしれない。ほんの三歩歩ければ。
また汽車が来る。
駅員が慌て走ってきて私をひょいと持ち上げ、車掌に渡す。死んでないだろね、トランクのほうが重たくなってら、と車掌が笑う。

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