2009年8月14日金曜日

夢 第二夜

生前葬に呼ばれる。
食事を始めて暫くすると、ストレッチャーに乗った旧い友人が現れた。治療法の確立されていない難病に冒され、余命いくばくもなくなり、生前葬を決めたらしい。
十数年振りに見る彼はげっそりとやつれ、髪は真っ白になっていた。あちこちにチューブや包帯を付け、痛むのか頻りに左の太股を擦っていた。
はち切れんばかりの笑顔の彼は、そこにはなかった。私は彼にずいぶんと世話になった。逞しい彼は、少々お節介だったけれども、確かに私の騎士だった。
感謝を伝えたかった。病との闘いを労いたかった。しかし虚ろな目の彼に掛ける言葉が見つからない。いくら咀嚼しても唾液が出ないまま、出された食事をもそもそと臙下し続ける。

(300字)