甘い匂いに誘われて通りを歩いていると、蛇が絡まる絵が施された黒い面を被った男が、露店を開いていた。
「いらっしゃい」
高い鼻の面からくぐもった低い声がする。
「箱から出てきたのが青い玉なら夢をあげましょう。赤い玉なら、闇をあげましょう」
面の中から覗く男の目が金色に光る。
差し出された箱は、男の面と同じ黒地に蛇の這う絵。丸く開いた穴に手を入れると、生暖かい。
底に触れて探っても、玉など一つもなかった。男に問い質そうと口を開き掛け。た途端、手のひらに飛び込む球体。
恐る恐る引き上げると、私の右手は鮮やかな赤い玉を握っていた。
「おめでとう。闇を差し上げます」
煙草の煙でも吐き出すように、男の口から黒い靄が出てきた。少しも逃すまいと、口を開けて吸い込む。どうしてこんな不気味なものを吸い込もうとするのだ、と頭の片隅で考えるが、やめられない。
闇を受け取ってからというもの、休日になると面を付け、箱を抱えて通りに出る。もちろん、尖った鼻の黒い面には蛇の絵。
「いらっしゃい。赤い玉なら
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