ピンポーン
玄関を空けると大きな籠を抱えた女が立っていた。
「大事にしてください」
と籠から透明なボールを取出した。
「風呂場に置いておくものです、どうぞ」
「受けとれません」
「お金はいりませんから…」
女は強引にボールを押し付け、去っていった。
ボールはよく見ると中に黒っぽいものがあった。
プニプニとしていて触り心地もいい。
置くところもないので女に言われたとおり風呂場置いておくことにした。
ピンポーン
数日後、また女は現れた。籠はもっていなかったが、子供を八人も連れていた。
「またあなたですか」
「ちゃんと風呂場においていただきましたか」
「ああ、あのボールね。風呂場にあるよ」
女は聞き終わらないうちにずかずかと部屋に入った。呆気に取られて止めることもできない。
「ありがとうございました」
女は子供の手を引き玄関に戻ってきた。
「大変お世話になりました」
女は九人の子を従えて帰って行った。