2005年1月3日月曜日

ゲラヒマル

とある島の山奥に棲む鳥は、秋に白い花を付ける高い木の頂上に巣を作り、卵を一つだけ産む。
鳥は島で最も大きく、最も数が少ない。木は島で最も高く、最も数が多い。
卵は円錐形をしており、母鳥が温めるためにその上に座ると腹部に突き刺さる。
血は巣から滴り落ち、地面に染み込む。
ヒナがかえると同時に母鳥は死ぬ。
もしもヒナがかえる前に母鳥の命が絶えれば、卵もまた死んでしまう。
死んだ母鳥は既に干からび、ヒナはその姿を見て「へ」と鳴き、すぐに飛び立つ。
母鳥のミイラを頂上に掲げた木はその年、紅い花を咲かせる。
「ゲラヒマル」現地の言葉で「紅いミイラ」。
鳥と木は同じ名前を持つ。