電信柱のてっぺんに黒猫はいた。
「これで射ち落とせ」
と小父さんから手渡されたのは、ピストルだった。
ぼくはその重みと冷たさに戦いた。
「……死んじゃうよ。やだ、やりたくない」
「いいから、やれ」
小父さんの顔はこれ以上の抵抗を拒否していた。
ぼくは銃口を上に向け目をきつく閉じた。
どうしよう、ぼくは黒猫さんを殺そうとしている。
塔でたくさんおしゃべりしたのに! できないよ!
「さあ」
小父さんの低い声に促されるように、引き金を引いた。 あまりにも軽い感触だった。
白い翼が生えた黒猫がゆっくりと降りてくる。