「あんた月だろ、俺は知ってるぞ」
ピーナツ売りと三人で喋っているところに男が割り込んできた。
小父さんは明らかにムッとしていた。
小父さんは呼び捨てで呼ばれるのを嫌っている。
「はて、あなたにお会いするのは初めてだと存じますが」
「俺は知ってる、月が□▲※△}@♪・`:☆だってな!
わっはっは!月もたいしたことはない!がっはっは」
なにを言っていたのかぼくはよくわからなかった。
笑いながら去っていく男は、いやなにおいがした。
「今日はラベンダーの香りにしておきました」
ピーナツ売りはぼそっと言った。
「気が利くね」
小父さんもぼそっと応えた。
帰り道、ぼくはバリボリ音を立てながらピーナツを食べた。
<行儀が悪いぞ、少年>とかなんとか言って欲しかったんだけど、小父さんはずっと黙っていた。