2007年2月14日水曜日

二月十四日 やけどが痛い

江戸っ子の切手は熱い風呂に入りたがる。
湯の温度をみてやろうと手を入れたらやけどした。
切手は平気な顔しているので破いてやろうかと思った。
でも破いたってやっぱり平気な顔をしているに違いないので、やめた。

2007年2月13日火曜日

二月十三日 バレンタイン前日

台所を借りにきたウサギがエプロン姿で甘い香りに鼻をひくひくさせている。
「チョコレートもらったことあるの?」
とウサギに聞くと「ある」とぶっきらぼうに言った。
「それで今作ってるのは?」
「去年のお返し」
ウサギにも律儀なところがあるものだ、と感心した。

2007年2月12日月曜日

二月十二日 乳香

乳香が漂うとウサギは身をよじった。
「どうした?苦手な香りだったか?」
「いや、いい匂い過ぎて。どうしたものか」
その声はうわずっていた。
ウサギがいるときには乳香は焚けないな、と思いながら蝋燭の火を吹き消した。

2007年2月11日日曜日

二月十一日 名前のない猫たち

新しい携帯電話には四匹の黒猫が付いて来た。
四匹には名前がない。
「名前が欲しいか?」と聞くと四匹とも寝てしまったので、名前は付けないことにした。吾が輩、なんて言って物書きをはじめなければよいが。

二月十日 春の予感

何故だか新しい口紅が欲しくなった。
口紅を塗るのは好きじゃないから、どうせ買ってもちっとも使わないんだろう。
だから高価な口紅を買う気ははじめからない。
ドラッグストアで手頃なのを買ってきて、どこにも出掛けないのに塗ってみたら、やっぱり満足して仕舞い込んだ。
口紅を塗ったままの顔をウサギに見られてしまった。
「へん、口裂け女が」

2007年2月9日金曜日

二月九日 薬屋あらわる

薬を買わなくちゃと思いながら通りを歩いていたら、都合よく薬屋さんが四軒も現れた。
次から次へと入ってみたが、欲しい薬は置いていない。
結局、薬は買えなかった。四軒も空振りな薬屋を出したのは、どこのどいつだ。

二月八日 ものもらい

「目ぇ腫れてるぞ」と切手に言われたような気がして鏡を見れば、本当に腫れているのだった。
パジャマのままで眼科に行くと、ほかの患者も受付のお姉さんも、お医者もパジャマだった。
「ものもらいですね。点眼薬を出しましょう」
とパジャマ医者はあくびをしながら言った。
けれども帰りのバスの中では一人パジャマだったので恥ずかしかった。
行きは目が気になって、気付かなかったんだな。