恋人が楽しみにしていた、マリンバのコンサートに出掛けた。
開演のブザーが鳴り、照明が落ちる。幕が開く。
けれども舞台は明るくならない。
演奏が始まる。
マリンバの音に合わせて、ぴょこぴょこと光の玉が跳ねている。
よくよく見れば、どこかで見たことがあるような光る金平糖……星のマレットだった。
演奏者は、よくも星たちを手懐けてマレットにしたものだ。
感心したのも束の間、そのうち星は好き放題に跳ねだした。
それでも、なかなかよい演奏だ。星たちは気持よさそうに跳ね、どこから飛んできたのか数も増え、舞台はすっかり明るい。満点の星舞台だ。
諦めたのか、はなからそのつもりなのかわからないけれど、演奏者は柄だけになったマレットをベルトに差し、マリンバの前で寝転がって、ぐっすりと眠ってしまった。
楽器の出てくる話を書くのは、とても楽しい。そしてなんだか嬉しい。
十代の前半の5年ちょっと、人生全体から見れば短い期間だけれど、楽器を吹いていた日々があったからこそ、楽しく書けるんですなぁ。