懸恋-keren-
超短編
2009年3月8日日曜日
月の……発作
「ナンナルまただよ、欠伸ばかりしてる」
少女の指摘通り、月は欠伸を止められなくなっていた。
「まったく一体どういうわけなんだろうねぇ」
長い名の絵描きも呆れたような、からかうような口調で言った。
尻尾を切られた黒猫は月を仰ぎ見る。
〔厄介だ〕
こんなにも美しい月を見ると欠伸が止まらなくなる月はどうかしていると黒猫は思う。彼は、彼の尻尾を見ても欠伸も出ないし、退屈もしない。
(181字)
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