懸恋-keren-
超短編
2009年3月3日火曜日
猫の足音
「靴を履いてみたいとは思わない?」
と長い名の絵描きは尋ねる。
「一人で歩く時は、靴の音がメトロノームさ。特にこんな寒い夜にはね」
コルネット吹きも応じる。
「この前も、肉球が冷えて赤くなっていたよ」
少女が畳み掛ける。
〔猫は足音を立てない〕
と答えたが、もしも履くなら爪先の尖った革靴がいいと、尻尾を切られた黒猫は考えている。
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