懸恋-keren-
超短編
2009年3月18日水曜日
素敵なお月さん
「ねぇ、ヌバタマは三日月と満月とどっちが好き?」と少女は夜空を見上げて黒猫に問う。
〔満月は歩きやすい〕
「そんな理由か……」
と、月は少々落胆する。
黒猫が生まれた晩は新月だった。翌晩現れた月に黒猫は大層驚いたものだ。そして、夜毎に形を変える月に照らされるのは悪くないと思うようになった。
「ナンナルは、下弦の三日月が一番ハンサムだよね?」
少女が隣の月の顔を悪戯っぽく覗き込む。
黒猫を撫でる月の手が暖かい。
(199字)
次の投稿
前の投稿
ホーム