南国の波は白い砂浜をひたすらに撫で続ける。
月が近い。満月は実に球体だった。
膝を抱えて海を眺める私の傍らに、少年が現れた。
「夜遅くに一人で……」
少年の横顔を伺うと、それは恐らく問題にならない心配であることがわかった。
少年の瞳は黄色い。波と全く同じ呼吸で、細い肩が僅かに上下していた。
少年は突然こちらに向き直り、囁くように言った。
「さぁ、おやすみの時間だ」
私はイエローの瞳に見つめられ、唇を柔らかく吸われ、砂浜に横たえられた。
月がいよいよ近い。手を伸ばしたけれど、触れたのかどうか判然としないままに、私は眠りに堕ちる。
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