2009年3月23日月曜日

ヌバタマの安堵

強い風でヒゲがあちこちにひっぱられる。
キナリの長くて細い髪はもっとあちこちににひっぱられて、そのまま風に連れて行かれるのではないかと思うほどだった。

風はピタリと静まった。
けれど、キナリの髪はぐちゃぐちゃに絡み合ったまま垂れ下がって、顔を塞いでいた。
手で解こうと苦心したが、余計に事態を悪化させるだけだった。
キナリはついにあきらめたのか、公園のベンチに座り込む。猫の手も舌も、人間の異様に長い毛は梳くことは不可能だ。膝の上に乗ってキナリを見上げる。髪に隠れて表情はよくわからない。

「キナリ!どうしたんだい、その頭は? 流星と取っ組み合いをしてもそんな髪の毛にはならないよ」
チョット・バカリーが現れたらキナリは泣き出した。顔に垂れた髪が涙と鼻水で濡れていく。
「泣かないで、キナリ、僕が解いてあげるから」
チョット・バカリーはキナリを抱き上げ膝に乗せ、コルネットを扱うよりももっと優しくキナリの髪に指を入れた。
少しづつ見えてきたキナリの顔は、穏やかな笑顔だった。

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