2008年12月30日火曜日

不用品

底の抜けた香水瓶、回らないろくろ、肋骨が二本折れた骨格標本、穴の空いたガスマスク、インクの出ないカラーペン、三十八年前のカレンダー、モザイクが赤く塗られたヌード写真の束。
彼女の部屋には何に使うのか解らないものが散らかって足の踏み場もない。
使い途がないからこそ愛しいのだ、と彼女は言う。
「効率的で有益な物ほど信用できないものはないの」
と彼女は僕の脇腹に舌を這わせながら、きっぱりと言った。
今、効率を求めるなら触って欲しいのはそこじゃない。全く徹底しているよね。きっと僕も取り立てて使い途がない愛しいもの、なんだろう。
と、天井にぶら下がった夥しい数のゴワゴワに固まった筆を眺めながら、苦笑いする。