これは、ハリボテの恋心。見せ掛けだけの、取り繕った、恋心。
冷気がやってくると、胸の高鳴りはすぅと収まって、冷たい私だけが残る。
好きなままでいたい。けれども、耳にひゅっと冷たい空気を感じたら、途端にときめきもいとおしさも消えてしまう。なんて貧弱な恋だろう、冷気ごときに負けるなんて。
一体、冷気がどこからやってくるのか。知りたくないのに、振り向いて後ろを確かめずにはいられない。
また、冷えた風が耳たぶを掠めた。
熱い風呂に入ろう。温まったら、あなたの夢を見ていいですか。さすがの冷気も夢までは襲ってきません。