水色の眼球がぷるんと震えて、とろけて、流れた。
伽藍洞になった眼窩に、ぼくは見覚えがある。父さんの顔にもやはり、伽藍洞の眼窩があった。
「おまえに甕は、渡せない」
と眼球のなくなった顔で男が言う。何故?と聞くと、おまえもこうなりたいか?と言われて、ぼくは黙った。
男の持つ甕を覗けば、あの水色の眼球になれる。白眼も睛も、すべて水色の眼球。ぼくは、それが欲しかった。水色の眼球なら。
「お前も母に逢いたいのだろう。確かに、母には逢える。いつでも一緒だ。だが、仕舞いには、こうして目玉が腐る。それでも欲しいか、母が」
甕の蓋を開けるとむしったばかりの葉の匂いがした。甕の中は、空よりも澄み、海より透明な青がどこまでも続いている。