空き地に作った秘密基地は、単なるカモフラージュで、本当の入り口は古いさびだらけのマンホールだ。
それはよくあるマンホールより少し小さくて、へんてこな模様をしている。ぼくたちは「宇宙人の文字だ!」なんて言いながら開けようとしたけども、マンホールはなかなか持ち上がらなかった。
何日かして、コウタがどこからか鉄の棒を持ってきて、マンホールを持ち上げた。テコのゲンリってやつだ、とコウタはいつもの知ったかぶりで言った。
マンホールの中は、真っ暗なんだけれど、しばらくじっとしていると目が慣れてくる。
そのうちにこうばしい匂いがしてきて、ぼくたちはそれに向かってあるくのだけど、あるいてもあるいても、匂いのもとは見つからない。
だんだんマンホールから遠くなって、帰りが急に心配になる。それで、いつも最後はわぁわぁ叫びながら走って戻ってくる。
明日こそ、あのおいしそうな匂いを見つけよう、と毎日思う。けれど、もう四年生も終わる。母さんが勉強勉強とうるさくなってきたし、最近ちょっとマンホールの穴が窮屈になってきたんだ。