2007年9月26日水曜日

捩レ飴細工

 弦の震えは大きな震動となり、夕暮れを揺らす。
 だらに、と法師の口から飴が溢れ出た。琵琶の調べに合わせ、飴は伸び縮む。捩れよじれる。法師の額に汗が噴き出す。
 飴は姿を変え続ける。胎児から般若へ。般若から船へ。船から馬へ。
 馬がいななくように仰け反ったところで、法師は撥を止めた。夕闇に静けさが戻り、熱気がすうと引いていく。ぼさっ。冷えて固まった馬が法師の口から落ちた。

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500文字の心臓 第70回タイトル競作投稿作
○2△2

「捩」は琵琶の撥の意。「レ」を撥の動きに見立てた。
そこに空也上人像のイメージを借りて。
飴の形は、性行為を象徴しているのだけども、これはわかってもらう意図はほとんどなく、むしろあからさまにならないように。ただ「絶頂で止める」感は、ちょっと感じてほしいかな、とも思ったり。(笑)
「だらに」は陀羅尼、「ぼさっ」は菩薩です。