懸恋-keren-
超短編
2007年9月23日日曜日
九月二十三日 ビップが逝く
ビップがほほえむ。お辞儀をする。その白い顔と細く長い手足に、わたしは戸惑う。いや、違う。彼の道化た姿ではなく、ひどく哀しみを背追っていることに、わたしは戸惑う。
なぜビップはほほえむのだろう。そんなに哀しいのに。
じっと見つめていたら、ビップはわたしの哀しみに気づいたようだ。わたしもほほえむ。ビップはもっとほほえむ。
一度はかえってきたビップ。今度は、さようなら。
……マルセル・マルソーに
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