2006年6月19日月曜日

ソーダ

娘の髪はソーダライトのようなまだらの群青色をしていた。
どんな触り心地だろう、どんな匂いだろう、ずっと眺めていたい。
「少しその毛を分けてはくれないか?」
気付くと掠れた声で言っていた。
我ながら信じられない頼み事である。気味の悪い依頼に、娘は顔色一つ変えなかった。
娘はぐっと髪から毛束を握り取り、鋏でジョキジョキと切った。
「そんなにたくさんでなくてもいいのに」
と言いおうとしたが、娘が鋏を動かす光景に見とれて声が出ない。
差し出された髪の毛を受け取ろうと伸ばす手が震える。
私の手の平に載った群青色の毛は、シュワシュワと泡を立てて溶けた。
私は慌てて手の平を舐める。