「サファイアが盗まれた」
と友人が言う。
サファイアはテディベアの名前で、宝石ではない。
ずいぶん大事にしていたからショックも大きいのだろうと思っていたら、間もなくテディベアは友人の元に帰ってきた。
「あぁ、ぬいぐるみなんかにするからいけないんだ」
とテディベアを抱きながら友人は言った。
「元の姿に戻そう」
友人はテディベアを洗面所に持っていき、水を流して洗い始めた。
少しずつテディベアは溶け、宝石のサファイアが顔を出す。
「おい、何でできてるんだ?このぬいぐるみ」
水音が大きくて友人には届かない。