懸恋-keren-
超短編
2006年6月18日日曜日
鼓動
まばたきもせずにマリアは血の涙を流しはじめた。
「どうしたんだい?マリア」
マリアの涙を一滴足りとも逃すまいと、僕はガラスの器で涙を受け止める。
マリアの朱い涙は、器の中で震え、結晶となった。
小さなカーネリアン。
僕はマリアの胸に、カーネリアンを埋める。
カーネリアンは鼓動を始めた。
マリアは初めての瞬きをした。
もう人形だなんて呼ばせない、僕のマリア。
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