懸恋-keren-
超短編
2006年6月1日木曜日
睨めっこ
タイガーズアイが付いた鏡が誕生日に届いた。
古ぼけたエスニックな枠に丸いタイガーズアイが二つ埋め込まれている。
鏡の中の私に向き合おうとすると虎の目がギロリとこちらを睨む。髪のセットもままならない。
やがて虎の目は、鏡に向き合っていない時にも、私に視線を寄越すようになった。
力強いその視線に負けじと、私も睨み返す。
ある時キッと睨み返すと、虎の目はふにゃりと笑った。
私は鏡に駆け寄った。そこには、三十男の自分ではなく褐色の瞳の少女が映っていた。
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