懸恋-keren-
超短編
2006年1月19日木曜日
いななきが聞こえたら
爺さまが、雲を見上げている。
尻のところで節くれだった手を組んで、じっと雲を見上げている。
「爺を呼んできな」と言われて出てきたけど、声は掛けられない。
雲はぐんぐん流れていく。
遠くで馬のいななきが聞こえる。
爺さまは、それを合図に走り出した。
あんなに速く走る力があるなんて、と驚いているうちに、爺さまは雲に乗った。馬の手綱を引くように雲を操って空高く翔けていった。
僕は流れる涙を拭きもせず、家に戻った。
《馬頭琴》
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